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探究の集い「たん究祭@成田」レポート

2024.7.18

中・高共通関連

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去る7月15日、探究の集い「たん究祭@成田」が開催されました。実行委員長の中村君を中心に、約3か月で準備を進めてきました。

 今、学校現場では学習指導要領で示された「総合的な探究の時間」をどう進めていくのか、試行錯誤しています。本校では約5年前から準備を進めてきましたが、日本の学校教育の中では、これまでにない新しい試みだけに、その理念がなかなか浸透していないのが現状です。本校も現在の3年生が入学してきた時に、組織的な運営を始めましたが、目の前の生徒がどうしていいか分からず、教員も不安が先行してしまい、苦しい状況が続いていました。そのような中でも、何人かの生徒が高い水準の課題研究を作り上げ、毎年2月に鹿児島で開催される全国高校生国際シンポジウムに出られるくらいになりました。そのうちの1人、中村伊吹君がとても刺激を受けて帰ってきたのですが、探究の重要性や楽しさを後輩になんとかして伝えたい、という強い希望を持っていました。そこで、学校の枠を越えて、探究の途中経過を発表してお互いに刺激し合いながら成長できるような場を作れないかという構想を話したところ、中村君がぜひ実現させましょうと、すぐに仲間を集めて、本校の実行委員会が立ち上がったのです。

 当初は成田市内と近辺の学校に声をかけて、学校の枠を越えた実行委員会を作ろうとしました。発表会というと完成された課題研究を持ち寄って、順位をつけていくケースが普通ですので、途中経過を報告し合うという理念がなかなか理解を得られなかったためか、全く反応がありませんでした。一方で、運営ではなく発表なら参加したいという声もありましたので、途中で方針を切り替えて本校生徒のみで運営を行い、生徒同士のつながりのある学校にも声をかけることにしました。準備の過程で気がついたのですが、生徒たちのアイデアを活かした方が、面白い企画ができていきました。教師の性(さが)で、つい細かいところに口を挟んでしまうのですが、それがかえって企画を面白くなくさせてしまいます。そこで私は最初に議論の方針、論点を明確にし、議論が暗礁に乗り上げた時のみ発言し、あとは生徒たちに任せてみました。多少の脱線は容認し、収拾がつかなくなったところで軌道修正を図ることに専念しました。京成線沿線の駅や成田市観光プロモーション課に協力を求めたり、参道のお店や市内の中学校にポスターを貼らせてもらうことなど、生徒がアイデアを出し、自分たちで実行していきました。極め付けは成田市長に参加をお願いしたこと。自分たちのアイデアを、手順を踏みながら筋を通していけば実現できるんだということを実感できたようです。正直言って冷や汗ものでしたが、結果的にこれがいい方向へ向かいました。立場の違う者同士がギリギリにせめぎ合うことによって、刺激的なものが生まれることを、改めて知ることができました。

 当日は50名くらいの参加者がありました。他校の生徒、学校関係者、生徒の知人、さらには関心を持たれた一般の方、様々な立場の方がご参加くださいました。午前中は富里高校、千葉英和高校、本校の生徒が、それぞれの探究の途中経過を報告しました。午後はまず探究についてのワークショップから始まりました。県立船橋高校、千葉英和高校の生徒さんにも登壇してもらい、実行委員長の中村君が進行しながら4名によるトークセッションで、探究の面白さやつまづきやすいところ、それをどうやって切り抜けたか、といった実践的なところを話してもらいました。そして最後に会場の皆さんと一緒に「未来のまちを創造しよう〜ともに考える理想のまち〜」と題して、見学者の皆さんも一緒にディスカッションを行いました。進行を務めた高橋君のアイデアで、議論が散漫にならないよう、医療・福祉に絞って議論を進めました。私が事前に出した条件は、ディベートではなくダイアログ(対話)で議論を進めてほしいということでした。大人でも難しいことをうまくまとめてくれたと思います。当初は行政にああしてほしいこうしてほしいという方向に向かいそうでしたが、一般参加者の方から自分たちに何ができるのかという視点で議論を進めた方がいいという意見をいただいてから議論が建設的な方向へ変わっていきました。また、この時間に参加いただきました成田市の小泉市長からは、多くの行政情報を発言していただきました。生徒たちも、長年にわたって行政のトップに立たれてこられた方の豊富な知識に、驚きと尊敬の念を抱いたように見受けられました。これこそ私が求めていた主権者教育でした。自分たちに何ができるのかということを考え続けようという意識が芽生えたように思います。

 「たんQ祭@成田」は、探究の魅力を知った生徒と、生徒が成長する探究とは何かを問い続けてきた教師との対話から誕生しました。そして、実行委員の生徒たちは、手探りながらこのファーストイベントを成功させるためにこの3か月という短い期間に全力を尽くしてくれました。結果として、全国的にも珍しい形のイベントになったのではないかと思います。実行委員長の中村君は、このイベントが成田から千葉県、さらには全国へと輪が広がっていくことを望んでいるとの夢を語ってくれました。探究の途中経過を発表しながらさらなる探究のきっかけにしていこうということ、そして生徒主体で開催することの2点を堅持しつつ、今後も継続していきたいと思います。開催にあたって、大正大学と成田市のご協力をいただきましたことにつきまして、改めて感謝申し上げます。

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